上機嫌で何が悪い!ブログ 「日の名残り」カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳

 いろいろと示唆に富んでいるように思えます。

 『夕方が一日で一番いい時間なんだ』と海のそばで夕陽を見ながら教えられます。60歳台の太った男がスティーブンスにいうセリフです。きっとそうなんでしょう、僕は退職後の第二の人生をすごく楽しみにしています。

 ダーリントン卿が死ぬ間際に自らの過ちを選んだのに対して、スティーブンスは『私は選ばずに信じたのです。私は卿の賢明な判断を信じたのです。私の意志で過ちを犯したとさえ言えません。』と告白します。信じるのか、疑い続けて迷い続けるのか。さて、後悔しない人生って、どうな人生でしょうね。

最後にスティーブンスはジョークを学ぼうと考えます。新しい主人がアメリカ人ということもあります。『人間どうしを温かさで結びつける鍵がジョークの中にあるとするなら、決して愚かしい行為とは言えますまい。』と考えます。僕も笑いこそが現代の共通言語である、とさえ思っています。

 カズオ・イシグロの本は読みやすいです。平易なことばで書かれているので、小説の中に入っていきやすいです。非常に面白いです。ブッカー賞受賞作です。