2021-01-01から1年間の記事一覧

上機嫌で何が悪い!ブログ 「日の名残り」カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳

いろいろと示唆に富んでいるように思えます。 『夕方が一日で一番いい時間なんだ』と海のそばで夕陽を見ながら教えられます。60歳台の太った男がスティーブンスにいうセリフです。きっとそうなんでしょう、僕は退職後の第二の人生をすごく楽しみにしています…

上機嫌で何が悪い!ブログ「アウトロー・オーシャン」(上)(下)イアン・アービナ著 黒木章人訳

確実に僕の感覚の世界が広がった本、海ではこんなことがおきていたのか。 筆者は「ニューヨークタイムズ」の記者で、この一連の取材でピュリッツァー賞受賞。ソマリアやタイの大臣に直接電話することができるほどの権力と人脈と資金力と技術力を駆使して、大…

上機嫌で何が悪い!ブログ「オーバーヒート」千葉雅也著

言葉を使って思考する以上、言葉の選択が思考の精度を誘導することになります。この本は、その発端となる最初の言葉が、日常のちょっとした違和感のような感覚から発生している、その発生をよく描いています。その感覚を生み出す感性が非常に鋭いのです。 例…

上機嫌で何が悪い!ブログ「忘れられた巨人」カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳

ゲームオブスローンズの世界やん!これが第一印象です。騎士、ドラゴン、鬼、砦がいかに効率よく人を殺すことができるのか、そして民族間の対立。 ブリトン人もサクソン人もともに同じ神(キリスト教)を信仰しながら根深くいがみ合っているのは不思議な感じ…

上機嫌で何が悪い!ブログ「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳

やっと読むことができたカズオ・イシグロ。強烈なインパクトのある小説、文句なく面白いです。全体の構成や詳細も無理している感じはなく、世界に引きずりこまれます。小学校から高校まで系列学校で育った僕にとってヘールシャムでのキャシーのスクールライ…

上機嫌で何が悪い!ブログ ドストエフスキーとの59の旅 亀山郁夫

偏愛、ドストエフスキーへの偏愛が感じられます。深読み、精神的外傷、偶然の出会い いろいろな角度から筆者はドストエフスキーの世界にはまり込みます。 船曳健夫「旅する知 世紀をまたいで世界を訪ねる」に似ているかもしれません。知識が多い人間は、偶然…

上機嫌で何が悪い!ブログ 「火を熾す」ジャック・ロンドン著 柴田元幸訳

ジャック・ロンドン こんな短編小説家がいたなんて!タイトルにもなった「火を熾す」の鮮烈なこと。マイナス50度の中を歩き続けることの危険性、たった一度の判断の誤り、ー雪がたっぷり積もった木の下で火を熾してしまったことー、が生死を分けるその命の営…

上機嫌で何が悪い!ブログ「旅のつばくろ」沢木耕太郎著

いいなぁ沢木耕太郎、思いつきを行動に移す反射神経が好きです。例えば軽井沢の雲場池の存在を隣り合わせた老婦人から教わったこんな文章で。「しかし、この偶然を生かさない手はないと思えた。軽井沢で降りると、老婦人が教えてくれたとおり循環バスに乗っ…

上機嫌で何が悪い!ブログ「戦国の陣形」 乃至政彦著

江戸時代の参勤交代のイラストへの説明に、上杉謙信の「車懸かりの陣を基にした」とありました。平和な時代の行列と軍神と呼ばれた謙信公の戦術がどない関係するねん!と疑問でした。なんと、弓 鑓 騎馬 鉄砲等の兵種別の運用を本格的に始めたのが謙信公だっ…

上機嫌で何が悪い!ブログ「別のしかたで ツイッター哲学」千葉雅也著

テーマの沿ってツイートが並ぶ形式。「テクスト(かかれたもの)は宿命的に相手には届かない」、という内田樹先生の言葉を信頼して、どんどん読み進める。複数の連続するツイートで一つのテーマを形成している箇所もありますが、基本的には一つのツイートで…

上機嫌で何が悪い!ブログ「本当の翻訳の話をしよう」村上春樹 柴田元幸 著

アメリカ文学って、そんなにも魅力的なのかぁ、と思える対談集、講義録。正直言って、マニアックすぎてついてけないところもあります。でも、お二人のあまりにも楽しそうな雰囲気に呑まれて、ついアメリカ文学をいろいろと読んでみようかなと思わせられます…

上機嫌で何が悪い!ブログ「どこか、安心できる場所で 新しいイタリアの文学」パオロ・コニェッティ他

イタリアについて書いてある本は、まぁある。少ないにせよ読んだこともある。須賀敦子とか塩野七海とか。イタリアの文学ってどんなの?国に独特な発想とか文物の表現とか文脈ってあるの? 僕たちは、「国語」を使って思考するから、語法の檻から抜け出すこと…

上機嫌で何が悪い!ブログ「君がいないと小説は書けない」白石一文著

随筆なのか小説なのか?自伝的小説と「帯」にあったけど、いやいや、少なくとも分量の半分は随筆です。 人生の自分に降りかかってきた出来事を「たまたま(偶然)」起こったことであっても、それらを撚り合わせて因果関係を見出し、そして必然と見做す。それ…