上機嫌で何が悪いブログ!「クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国 若桑みどり」

わかってたことだが読了感が悪い。そりゃそうか、弾圧の歴史と重なるもんね。しかし、面白い。イエズス会も、後世を意識しているんだろう、文書による報告書がたくさん残ってるせいで、知らなかった文書や事実がたっぷり。 へー、信長って、「わたしが神である」かぁ。国を統治する正統性を担保するために自らを神格化するのは、秀吉や家康と同じだけど、普通は死後神格化するよな。生前から神格化するって、筆者もいうように「かなり危険」な気するその他、日本側にはない資料というのもかなり多く紹介されていて歴史好きにはたまらない一冊

実は前半は、なかなか読みにくかった。が、イエズス会内部の対立軸を理解すると急によみやすくなった。
●スペイン・ポルトガル出身 宗主国の意識が強く植民地を上からの目線でとらえる。 ルイス=フロイスコエリョ、カブラルらがこの立場
イタリア出身 国家意識が少なく、植民地の習慣を尊重して教化を進める。 ヴァリニャーノ オルガンティーノらの立場

この立場の違い、姿勢の違いが、後日、決定的でなかったにせよ、かなり弾圧を強める、早める方向に作用したことは間違いない。

「4人の少年をバチカンに派遣する」ということを通じて、その前後の日本の時代背景、イエズス会バチカンの内部対立が丁寧に描写されている、とまとめることが筆者への失礼にあたるくらい資料や根拠が詳細に提示されている。

最後に、4人の少年達の死に様を描きつつ、そっと吐き出された一文を。「人間の価値は、社会において歴史において名を残す「傑出した」人間になることではない。それぞれが、自己の信念に生きることである。」