上機嫌で何が悪い!ブログ「霧のむこうに住みたい」須賀敦子著

単行本未収録のエッセイ集。女流作家に、もひとつ縁のない(面白いと思える作家に出会ってないだけかも)僕が読了後に「須賀敦子ってほんとに素敵な文章かかはるなぁ」、って独語するくらい面白い。文体が上品 それでいて率直な表現、明るさは感じないが、情景が不思議なくらいリアリティーを伴って瞼に浮かぶ感じこの感じ、かなり特徴的な文体です。

このエッセイ中「となり町の山車のように」は、「”時間”を拾い集めて走る夜行列車」という着想が、実は”記憶”に変換可能なものであり、それを「線路に沿って」ひとまとめの文章につくりあげることが物語ることであるというというのは、なかり須賀さんがイメージする「ものがたること」本質に迫っていると感じたけどどうでしょうか?

最後に、「アッシジに住みたい」から珠玉の一編を。「陽が落ちはじめると、アッシジの建物は、すべて薔薇色に燦めく。(中略)アッシジの建物の石は、町のうしろの山の採石場でとれるもので、もともと、うすいピンクなのが、夕陽のなかで、あかあかと、そしてつぎには、むらさきに、ゆっくり染まる。自分たちもその色に染まったなかで、百の考えがゆっくりと脳裏をよこぎった。ふと気づくと、あたりは暗くなりはじめている。平野のあちこちの人家に、明かりがまたたきはじめるころ頭上は満点の星。

そう、僕たちは、時々刻々変化の中を移ろいながら生きていく。