上機嫌で何が悪い!ブログ「夏目漱石を読む」吉本隆明

明治の文豪 夏目漱石に迫る一冊。「迫る」というかもう「抉って」います。その生い立ちから、育った家庭環境から、作中人物から、文体から。吉本隆明特有の「〇〇〇と思います。」という言い切りの表現が多いのが気になるけど、吉本隆明ならでは、ということで。

確かに漱石の作品って、やたらと三角関係(現代風に言うなら不倫とか略奪愛)をテーマにした作品が多い(そして最後は破滅する)のが非常に不思議だった。なんでこれで国民作家なの?そこに吉本は明確には答えてくれません。ただ、文学の「初源性」という言葉でやや答えようとしているだけです。吉本は、会いたくて会いたくて堪らない、別れた瞬間から会いたくなっている、そういう「心躍り」がテクストから感じられれば、そのテクストこそが、初源性がある素晴らしいテクストとしています。

だけど漱石って大変やっかいなおっさんだっのかも、ですね。パラノイア(他人が常に自分を批判していると思い込んでいる症状)だったとは妻からの証言です。「硝子戸の中」を読んでいる限りとっても穏やかな日常をすごされてそうな印象だったのですが。

因み僕は、「門」が一番好きな作品です。ひっそりとした二人きりの日常の描写に僕の理想を重ねたりしています。(それに作中では誰も死んだりしないですし。)