上機嫌で何が悪い!ブログ「旅のつばくろ」沢木耕太郎著

 いいなぁ沢木耕太郎、思いつきを行動に移す反射神経が好きです。例えば軽井沢の雲場池の存在を隣り合わせた老婦人から教わったこんな文章で。「しかし、この偶然を生かさない手はないと思えた。軽井沢で降りると、老婦人が教えてくれたとおり循環バスに乗った。すると十分足らずで停留所につき(中略)、このような見事な紅葉を見られるということが奇跡のような気がするほどものであり、生で、しかも目近かでみた紅葉には、パンフレットの写真の美しさをはるかに凌駕する奥行きと色の複雑さがあった。」

 旅にはチャンスをものにするゆとりがあったほうが面白い、だけどそれだけで旅が面白くはならない、そこには決断力が必要なんだろう。

 だけどそんな幸運は、数多くの旅を重ねないと巡り合えない。少なくとも僕はそんなに旅をすることができない。

 そんな僕でも面白く旅するコツについて、沢木は、何でも「面白がること」と書いている。過去の体験や出来事、故人とのやりとりをきちんと抽斗にしまっておく。それを時宜に応じて取り出して、そして今、眼前で行われている状況と比較して面白がる。それがコツらしい。

 何でも、結びつけて考える力、つまりは編集する力、それこそが「面白がる」秘訣なのではと考えました。