上機嫌で何が悪い!ブログ「未亡人の一年(上)(下)」ジョン・アーヴィング 都甲幸治 中川千帆訳

「ただのエディーとママじゃない」という言葉を40数年の時を経て、2度聞くことになったルース=コールの一生を描いた、まるで大河ドラマのような作品。子どものときから、事情があったにせよ、母に愛されなかったコールが、長じて小説家になったらこんな作品をこのように仕上げる人になりました、という一作。

作中、コールが小説を仕上げようとする、心の動きを描く。その動きや迷いにこそコールの幼少期のトラウマ(そして本人も気づかない) から逃れがれられなさ、怖さを感じた。トラウマは、その当人にとっては、まるでドーナツの穴のようにぽっかりと抜け落ちているが、積極的に認識し、定義づけることができないものであることがよく分かる。(俺には本当にないんだろうか?)

それにしても、一歩違えればポルノ小説に堕ちかねないワードが堂々と展開されているが、扱っているテーマが心的外傷だけに、読み応えのある非常におもしろい作品。小説を書くためアーヴィングからのアドバイスもふんだに盛り込まれていると思ったがどうでしょうか? セックスの実体験を恐れ、観察から細部を得ようとするルースのその執筆の姿勢は、アーヴィングの姿勢なんだろうか?他の作品も読んでみようっと。

しかし、それにしても、子どもの前では読みにくかったぁ。