上機嫌で何が悪い!ブログ「本当の戦争の話をしよう」ティム・オブライエン著 村上春樹訳

僕にも面白い本をかぎ分ける能力が育っているのだろうな。いっつも他人のおすすめばかりだけど、この本についてはおもしろそうな匂いを「感じ取った」。しかもタイトルに「戦争」なんてワードが入っているにも関わらず。

オリジナルのタイトルは「Things  They Carried」(彼らが負ったもの、ぐらい?)。こっちの方が、意味深くなるし、幅も広くなる、より多くの人を引き付けるタイトル。(ところが、読了後には「本当の戦争の話をしよう」のほうが、いいタイトルだな、と思えます。)

筆者はストーリーの効能についてしばしば言及します。「ストーリーの力というのは、物事を目の前に現出させることにある。私はそのとき見ることのできなかったものを今見ることができる。」「ストーリーの真実性は、実際に起こったことの真実性より、もっと真実である場合がある」(グッド・フォーム より)

「ストーリーの大事なところは、君がそれを語りながら、それを夢見ているというところだ。他人にも自分と同じように夢を見てほしいと望みながら」「ストーリーによって死者を生き続けさせることができた」(死者の生命 より)

筆者はストーリーの全能性を信じているように思えます。

「本当の(戦争の)ストーリー」が、「真実とはかけ離れたもの」で、「教訓や一般法則や抽象論とはかけ離れたもの」であったとしても「はらわたの直観にずしりとくる」ものであり、偽りなく話すことができれば、誰もが納得することになる。(本当の戦争の話をしよう より)

それはそのストーリーを聞く者にとっては、腑落ちであり、癒しとなるのでしょう。

そんなストーリーテラーになりたいものですね。

この本は短編集ですが、連結部分に超短編が挟み込まれていて、リーダーフレンドリーな本です。読了後の満足感高いですよ、きっと。