上機嫌で何が悪い!ブログ「門」夏目漱石

再読、なぜ今頃?

「「敲いても駄目だ。独りで開けて入れ」と云う声が聞こえただけであった。(中略)彼自身は長く門外に佇立むべき運命を持って生まれてきたものらしかった。(中略)けれども、どうせ通れない門なら、わざわざ其処まで辿り着くのが矛盾であった。彼は後を顧みた。そうして到底又元の路へ引き返す勇気を有たなかった。彼は前を眺めた。前には堅固な扉が何時までの展望を遮っていた。彼は門を通る人ではなかった。又門を通らないで済む人でもなかった。要するに、彼は門の下に立ち竦んで、日の暮れるのを待つべき不幸な人であった。」

僕は、日暮れて尚、門を通れていない、と思うことがよくある。門を通った先に、きっと又門があるのだと思って慰めているのだが。