上機嫌で何が悪い!ブログ「君がいないと小説は書けない」白石一文著

随筆なのか小説なのか?自伝的小説と「帯」にあったけど、いやいや、少なくとも分量の半分は随筆です。

 人生の自分に降りかかってきた出来事を「たまたま(偶然)」起こったことであっても、それらを撚り合わせて因果関係を見出し、そして必然と見做す。それによって、人生に濃淡がでて、非常に魅力的にみえるようになるんだなぁ、という見本です。

 最愛の人ことりの不倫疑惑に苦しみながらも、自分の人生は「長くて退屈でひどく空しい夢」のようなものと認定しつつ、そのような人生を自ら選択している、ことを深く洞察している作者は、自己をよく観察しているんだなと、感じ入ります。

そ ういう人生観が伺えるのが、S氏のくだり。冒頭一文目『去年も知り合いが二人死んだ』から始まり、そして、『75年の人生の終わりに、結局は一介の死者となってしまった者が人生の成功者のはずもなく、まして幸運な人間だと言えるはずもない。』『幸福な人生などどこにもありはしない、というのは、やがて死すべき私たちにとって圧倒的な説得力を持つ考え方である。』

 そう喝破されて、残念に思う人もいるでしょうけど、僕にとっては、非常に勇気づけられた。「大丈夫、このまま生き続けてもいいんだ。」と思えました。